- 「ベトナム語を学んで、何か良いことがあるのだろうか?」
- 「パートナー(彼女・彼氏、妻・夫)とは日本語で話しているけど、ベトナム語を話せたらもっとコミュニケーションが取れるのに。」
- 「職場にベトナム人がいるけれど、深い会話ができていない。」
- 「ベトナム人とベトナム語で話すことで、もっと交流したい。」
こういった悩みを持つ方に向けて、解説していきます。
読了後のゴール
この記事を読むことで、「ベトナム語を話せるようになることで得られるメリット」を、より具体的にイメージできるようになります。
本記事を読み終わった後は、今あなたがベトナム語を学習するべきかどうかの決心を、後押しします。
筆者の紹介
筆者について簡単に紹介します。
- ベトナム語を独学で習得。
- ベトナム企業2社で勤務し、社内コミュニケーションは全てベトナム語を使用。
- ハノイとホーチミンの在住経験あり(現在はハノイ在住)。
このような経験を持つ筆者だからこそ、「ベトナム語を話せて良かった!」と感じたメリットを、実体験に基づいて解説します。
ベトナム語学習のメリットは、「人間関係の改善」と、「行動範囲の拡大」
ベトナム語を学習することで得られる最大のメリットは、一言でいうと、人間関係が良好になり、行動範囲が広がることです。
具体的には以下の6つが挙げられます。
- 初対面の人に覚えてもらいやすい
- ベトナム語で情報収集ができる
- ベトナム人と親密になりやすい
- 褒められた時の、ちょっとした優越感を味わえる
- ベトナム人の心理を理解しやすくなる
- ベトナムでの外出や旅行の行動範囲が広がる
それぞれ、詳細を解説します。
【メリット1】初対面の人にすぐに覚えてもらえる
1つ目のメリットは、初対面の人にすぐに覚えてもらえることです。
これはベトナム人からだけではなく、日本人からにも当てはまります。
理由は、ベトナム語を習得し、実際に使えるレベルまで到達している日本人が少ないからです。
2022年の時点で、在ベトナムの日本人は約2万2千人、日本企業は約2000社と言われています。
約10年、ベトナムに居住した筆者の経験から言うと、ベトナム語を仕事で使用できるレベルまで習得した日本人は、10人に1人いるかどうかです。
したがって、「この人はベトナム語を話せる人だ」と認識されると、名前を覚えてもらいやすいのです
筆者自身も、私生活とビジネスの両方において、「ベトナム語を話せる人だ」ということで記憶に残して頂けることを実感しています。
周囲の記憶に残してもらえることで、私生活やビジネスのどちらにおいてもプラスに働くでしょう。
「初対面の人に覚えてもらいやすい」というのが、1つ目のメリットです。
【メリット2】ベトナム語で情報収集ができる
メリットの2つ目は、ベトナム語で情報収集ができるようになることです。
このメリットは、特にベトナム居住者にとって有効でしょう。
ニュースや経済情報、旅行情報など、ベトナムの生の情報を日本語で発信する媒体は限られています。
したがって、日本語でベトナムに関する情報収集をしようとすれば、どうしても限界が出てしまいます。
もし、日本語だけではなく、ベトナム語を使ってネットから情報を集められるとすれば、得られる情報の幅は、日本語のみの時に比べて大きく広がります。
例えばホーチミンで、今流行しているカフェを見つけたいと思った時、ベトナム語で調べることで、日本語よりも圧倒的に多くの情報を得ることができます。
筆者自身も、居住するハノイで休日の外出先を決める時、日本語ではなくベトナム語を使用します。
Google マップやインスタグラムでの検索時にはベトナム語で検索し、表示された情報を参照するようにしています。
定番のお店や旅行先であれば日本語や英語の情報でも十分な情報が得られます。
しかし、今流行している場所や旅行者があまり訪れない現地人の間で流行している場所を見つけるときには、この方法が最適です。
以上が、メリット2つ目の「ベトナム語で情報収集ができる」という点でした。
【メリット3】ベトナム人と仲を深めやすい
メリットの3つ目は、ベトナム人と仲を深めやすいという点です。
自分の言語を話す外国人がいれば嬉しくなるのは、どの言語や国でも共通のことです。
ただ、ベトナムにおいては、ベトナム語を話す外国人に出会うことがとても嬉しい、というポジティブな感情が、とりわけ強いようです。
以下のリンクにある、ベトナム語で歌を歌う外国人のYouTube動画のコメント欄には、「私たちの言語で美しい声で歌ってくれてありがとう」「前世は間違いなくベトナム人だ」というような、大変好意的なコメントで溢れています。
とはいえ、彼ほどの歌唱力や、流暢にベトナム語を話す必要はありません。
「こんにちは」「お元気ですか?」といった挨拶や、「美味しい」などの気持ちを表す語句だけでも、親しみを持ってもらえます。
筆者が前職で、ベトナム出張に来た日本人2人のアテンドをした際、1人(Aさん、とします)はベトナム語を話そうとせず、もう1人(Bさん、とします)はカタコトながらも積極的にベトナム語を話していました。
後日、上司とアテンドの振り返りをしていると、Bさんはとてもフレンドリーで親切な方だ、と親しみやすい印象を持っていました。
そのため、もし身近にベトナム人の同僚や友人がいる方は、少しでも単語を勉強し、話すだけで、仲良くなりやすくなる、と言えるでしょう。
以上がメリットの3つ目、「ベトナム人と仲を深めやすい」という点でした。
【メリット4】褒められた時の、ちょっとした優越感を味わえる
メリット4つ目は、「ベトナム語を話せるのですね!」と褒められることで得られる、ちょっとした優越感です。
当然ながら、優越感を得るためにベトナム語を学習する、という訳ではないでしょう。
しかし、自分の持っている能力を褒められると嬉しくなってしまうことは、想像にたやすいのではないでしょうか。
前述の通り、ベトナム語を習得している日本人は数が多くないことから、ベトナム人と日本人、どちらからも、話せるだけである一定レベルの尊敬の念を抱いて頂ける場合が多くあります。
もちろん、「凄い!」と思われることで努力を怠り、現状に留まっていてはよくありません。
しかし、周囲から褒められる経験を、「更に上手くなろう!」という向上心につなげられれば、この優越感も非常にメリットのあることだと言えるでしょう。
以上が、メリットの4つ目「褒められた時の、ちょっとした優越感を味わえる」でした。
【メリット5】ベトナム人の心理を理解する助けになる
メリット5つ目は、ベトナム語を学習することで、ベトナム人の心理を理解する助けになるという点です。
ワシントンポストで初の女性支局長を務め、多様性に満ちたヨーロッパに関する著作を書いた特派員フローラ・ルイスは、言語についてこう語っています。
「別の言語を学ぶということは、同じことを表す異なる言葉を学ぶということだけではなく、物事に対する別の考え方を学ぶということでもあります。」
この言葉の通り、ベトナム語を学ぶことでも、ベトナム人が持つ物事に対する考え方を学べると実感しています。
筆者自身が、この点を実感した例を紹介します。
それは、「nhiệt tình」という単語です。
「熱心(nhiệt tình)」が表す、ベトナム人がサービスに求めることとは?
「nhiệt tình」という単語は、直訳すると「熱心」という意味です。
ある時、ベトナム人と会話をする中で、何度も「nhiệt tình」という言葉を耳にするものの、日本語の「熱心」とは異なる概念で使っているのではないか?という感触を抱きました。
相手のサービスが良く、ポジティブに言い表したい時には、誰でもほぼ例外なく、この「熱心」という単語を使っていたのです。
違和感を抱いた理由として、日本語では、営業マンや店員のサービスを褒める時、「この人は熱心だ!」とは言わないからです。
例えば、日本で保険のセールスを受けたとしましょう。
日本語でもしこのセールスマンのサービスの良さを褒めたければ、「知識が豊富である」「きめ細やかに対応してくれた」「気遣いができる」などが最適でしょう。
一方ベトナムでは、同様の状況にある時、ほとんどの人が「nhiệt tình」という言葉で表現するのです。
「なぜ、良いサービスに対して、どんな場合でも『nhiệt tình』と表現するのか?」
この違和感をベトナム人の友人に聞いたところ、以下のような回答をしてくれました。
一般的に、ベトナム人にとっての良いサービスとは、「決断を迷っているお客さんに対して、買うべき理由をはっきり伝えてくれて、お客さんをリードしてくれる」ことです。
もちろん、知識の豊富さや、きめ細やかな対応、気遣いも、嬉しいですが、「この製品がどれだけ良いのか」を、多く伝えてくれる方が嬉しい、と感じますね。
このことから、ベトナムの人がものを買うときには、お客さんをリードするくらいの勢いが好まれるということが理解できます。
もし日本で同様の対応をすると、「話しすぎ」「こちらの要望を聞いてくれない」というネガティブな評価に繋がってしまうかもしれません。
よって、上記の感覚はベトナムならでは、と言えるでしょう。
このように、単語の意味やその背景が示している意図や概念を理解することで、ベトナム人の心理が理解しやすくなるのです。
【メリット6】ベトナムでの外出や旅行の行動範囲が広がる
メリット6つ目は、ベトナムでの外出や旅行の行動範囲が広がる、という点です。
それは、ベトナム語しか通じない場所へも足を伸ばしやすくなる、ということです。
ベトナムの3大都市であるハノイ、ホーチミン、ダナンを旅行する分には、簡単な英語だけで十分に旅行ができます。
ハノイのリンラン通り、ホーチミンのレタントン通りなど、日本人が多く居住する場所では、英語すらも必要なく、日本語だけでも散策を楽しめるでしょう。
ただ、もし日本人や他の外国人が多くない場所へ行こうとすれば、ベトナム語を話すことが、以下2つの面で大いに役立ちます。
- コミュニケーション面
- 心理面
私は、とりわけ2番の心理面でのメリットが大きいと考えています。
理由は、コミュニケーション面は、最悪ボディランゲージで何とかクリアできるものの、「ベトナム語しか通じない場所へ行く」という心理面のハードルを大きく下げられるからです。
2015年、1社目の会社と2社目の会社の転職の間に、40日間のバスでのベトナム一周旅行に出たことがあります。
実際、「時間」「少しのお金」「決心」さえあれば誰でもできることですが、ベトナムを全く知らない人や言語が全くわからない人にとっては、心理的ハードルが大変高い行動でしょう。
これは、当時ベトナム語で意思疎通ができたからこそ、「ベトナム一周をしてみよう!」と決心ができたことでもあります。
このように、「ベトナムでの外出や旅行の行動範囲が広がる」ことがメリットの6つ目です。
ここまで、ベトナム語を学ぶメリットを6つ紹介しました。
どれも、「人間関係」と「行動範囲」の向上に役立つことを実感頂いたかと思います。
しかし、ベトナム語を学んでも得にくいメリットがあります。
それは、キャリアや収入面です。
【注意点】キャリアや収入面でのメリットは得にくい理由
何か新しい言語を習得する時に、暗黙的に心の中で「収入アップにつながるのではないか」と期待する人も多いと思います。
英語学習はその一例でしょう。
自分の専門分野と英語を組み合わせることで、「今の会社での給料アップ」「新しいキャリアの機会」「他国への赴任機会」「副業機会を得られる」などです。
ただ、ベトナム語を習得しても、そのようなチャンスは得にくいのが実情です。
理由は以下の通りです。
- ベトナム語と日本語の両方を話せる人は、ベトナム人の方が見つけやすいから。
- 日本人よりもベトナム人の方が、より低い給与で雇用できるから。
- 日本人が求める日本語レベルよりも、ベトナム人が求めるベトナム語レベルの方が高いから。
これら3つの背景から、以下のような状況が生まれます。
- そもそも日本人でベトナム語を話せる人を募集する求人が少ない。
- ベトナム語と日本語のどちらも求める求人は、ベトナム人の方がニーズを満たしやすい。
以前、ハノイ北部の日系製造業で、現地法人長(ベトナム法人の社長)を務める人に、お話をお伺いしたことがあります。
彼によれば、1年を通して、ベトナム語をアピールして応募をする日本人は、数人いるとのことです。
ただ、実際に彼のベトナム人の部下と話す機会を設けてみると、「発音が聞き取りにくい」「言っていることがよくわからない」「言い回しがベトナム人の使用するものではない」といったケースがほとんどだった、との事です。
そのため、日本語が必要なポジションでも、基本的には「日本語を話すベトナム人の採用に集中するようにした」、とのことでした。
もちろん、「ベトナム語を話す日本人を求めるポジション」は0ではないでしょう。
今後、在留するベトナム人が増える日本において、ベトナム語会話ができる日本人の需要が増加する可能性もあります。
ここでお伝えしたいことは、現状、ベトナム語を話す日本人を求めるポジションは非常に少ないため、ベトナム語習得をキャリアアップに繋げることは難しい、ということです。
ベトナム語習得を検討するときは、仕事や収入面の向上は考慮に入れないようにすることをオススメします。
【まとめ】ベトナム人と関係を深め、行動範囲を拡げたいなら、ベトナム語学習が役立つ
今回は、ベトナム語学習を始めようか、迷っている方に向けて、ベトナム語を学ぶメリットを紹介しました。
6つのメリットをおさらいします。
- 初対面の人に覚えてもらいやすい
- ベトナム語で情報収集ができる
- ベトナム人と親密になりやすい
- 褒められた時の、ちょっとした優越感を味わえる
- ベトナム人の心理を理解しやすくなる
- ベトナムでの外出や旅行の行動範囲が広がる
ベトナム語を学ぶことで、身近にベトナム人がいる方であれば、より仲を深められるでしょう。
ベトナム在住や、ベトナム旅行を控えている人であれば、行動範囲が広げられます。
今回の記事が、ベトナム語学習を決断するのに少しでも役立てば幸いです。
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